状況判断と自らの価値
先日、ある社長と話をしていました。
かれは、昨年を起業したばかりの新人社長さんでした。
彼の話では、ある社員がいるのですが、自分の決めた限られた仕事しかやらなくて困っているということでした。
立ち上げ当初の会社では、マーケティングから営業から製品開発から経理事務から雑用に至るまで様々な仕事がごちゃごちゃになって毎日襲ってくるでしょう。
それを社長ひとりでやらなくてはいけないのでは大変です。
たとえ、機械オペレーターという仕事として入っても、まだ、立ち上げたばかりの会社で受注も多くはないはずです。その仕事が朝から晩まであるはずがありません。
空いた時間は、他の工程を手伝うとか、必要な仕事をして、社長を助けてあげなくてはいけないでしょう。
どうやら、それは、私の仕事ではないと手を出さないらしいのです。
それを聞いたときなんてことだと思いました。
状況をみて、自分が何をしないといけないかが判断できない人なのかと、思いました。
たとえば、航海士であっても船が浸水してきたら水をかき出さなければ、船が沈んでしまうのに、私は航海士だから水をかき出すのは、私の役割ではないと言っていたら、船が沈んでしまう。
そういうことが、理解できないものが時々いるのを私は、嘆かわしいと思いました。
仕事の一番大事なことは、人の役に立つことです。
役割は、二の次でいいはずです。
「社長、今度こういう製品を作りましょう」「社長、この外注さんは、私と好みが合いますから、私に営業担当させてください」「社長、一緒にがんばって仕事をしていきましょう。困ったことがあったら、手伝いますから言ってくださいね」
という感じで仕事に取り組みたいものです。
もし、会社がうまくいって何人も社員を雇うことができ、その子たちが気のいい子たちだったら、社長は、新しく入ってきた社員たちを大事にし、その社員さんは、会社の中で居場所を失うでしょう。そうなるとその社員さんのような子は、身勝手な自己主張をし、会社を混乱させるでしょう。
それでは、会社がうまくいかない。創業からいてくれたが、仕方ないと退職をせまることになるでしょう。
その社員さんは、「なんで創業からがんばってきた私が退職させられなくてはならないのか」と社長を恨むでしょう。
逆に、その社員が自分の境界を作らず、なんでも頑張ろうとする子なら、創業時にありとあらゆる経験をし、スキルを身につけ、NO2として資質を磨き、会社の中で存在感を出していくでしょう。
そして、社長にも認められ、なくてはならない存在になっていけるはずです。
実は、自分の価値は、自分が思っている役割の中では、進化発展していかないのです。
たとえば、大工さんがいます。大工さんは、家を作るのが仕事ですから、ちょっとやそっとがんばったくらいでは認めてもらえません。大工が腕のいい仕事をするのは当然なのです。しかし、現場の前だけでなく、隣の家の前まで毎朝掃除をしたり、ご近所の方に元気な挨拶ができれば、「あんな大工さんにうちを建ててもらいたい」という人が現れるでしょう。
一見、大工の仕事とは、違うものがその人の評価を高くするのです。
もちろん必要なことをしなくてはならないという状況判断ができなくてはいけませんが、そういうものです。
そうして、その人の将来が開けていくのです。